お店に入るとまずは席の確保だ。
なるべく端っこの二人席を選んでリュックを椅子に下ろす。
リュックにはパソコンと折り畳み傘と、男にしては準備がすぎるリップやマスクなどのこまごまとした数々の小物類が入っている。
リュックを下ろすとほどよく歩き疲れた足と両肩が、心地よく開放される。
そしてカウンターに直行して別に選ぶわけでもないメニューをチラ見をして、カフェラテのホット、ショートを注文する。
10月になってからは必ず店内で飲むかどうか聞かれる。これが消費税10%の変化だ。
はいと答えていつも通っていますといったしたり顔でタリーズカードを会計皿に乗せる。
チャージ式のタリーズカードで会計をすることでドリンクは10円安くなる。
タリーズカードを提示することで初めて訪れたタリーズでも、いつもご利用ありがとうございます。と言ってくれる店員もいる。
タリーズカードを受け取り奥のカウンターへと移動。
ドリンクが用意されるまでカウンターに置かれたポップを読み込む。
なるほど今の限定商品はパンプキンか。
この店舗では今度イベントを行うんだ。
テディベアのぬいぐるみ可愛いな。
そう目に映るありとあらゆる情報を読み込んでいるうちにカフェラテが手渡される。
コーヒー豆の皮を再利用したナプキンを2,3枚ほど手に取り席へ戻る。たまに5枚ほど一気にとってしまうこともある。
席に戻ってからは2口ほど少し飲んでからパソコンを開く。お気に入りの丸メガネを掛けて。
このルーティンとなった一連の行動を数々のタリーズ店舗で繰り返してきた。
私はタリーズが好きだ。
今もタリーズでパソコンを開いている。
タリーズはうるさくない。スタバに比べると。
なぜなら女子高生が少ないからだ。
1人静かにパスタを食べるOLや、パソコンを開いているリーマンが多い。
四脚の椅子も基本的にクッション付きだ。
BGMもちょうどいい音量だ。
最高の空間を提供してくれるタリーズで、心地よく、お店に迷惑を掛けないように利用するために、土日祝日の昼間に長居しに行くことはない。
お店の売り上げの邪魔になるからだ。
嬉しいことに家から簡単に通える範囲でタリーズの店舗が多い。
そして数々のタリーズ店舗で常連と言えるほど通い続けてきては、いかなくなった店舗も増えていった。
別によくある話で店員に自分個人を認識されたくないからではない。
むしろ認識してくれると少しだけ長居が過ぎてもちょっとは許してくれるんじゃないかと思っている。
無論、土日祝日の昼間に長居しに行くことはない。
数ヶ月同じ店舗に通い続けて、店員も(おそらく)お互い認識しあったくらいでパタリと行かなくなる。
それをいくつかの店舗で繰り返してきた。
通わなくなった店舗にも訪れたい気持ちもある。
しかし、時間と場所がうまい具合に合わない。
そして行けたとしてもその店舗にいた社員さんがいなくなっていると悲しくなる。
間取りが狭い店舗だと社員さんが変わっているだけで以前とは全くの別の店舗に感じてしまう。
その社員さんがお客に提供しようとしていたくつろぎの空気が、社員さんがいなくなることでどっそり抜かれて、その狭い間取りの店内にぽっかりと穴が開いたような。別の社員さんの提供する空気を取り入れたような。
席や装飾は全く同じなのに、少し違う空気が漂うのだ。
今パソコンを開いてこのブログを書いている店舗も、今は週に1度は来るプチ常連だ。
しかしここも2月で来なくなるだろう。それは仕事の関係でだが。
数多くのタリーズ店舗を常連気取りしてはパタリと来なくなる。
これはタリーズ界の妖怪にふさわしい現象ではないだろうか。