(児童相談所完成図・港区HPから引用)
今一番話題に上がっている南青山の児童相談所問題。
12月14日には児童相談所を建てるにあたって周辺住民への説明会があり、その様子を収めた動画がネットやテレビで報道されると、反対派住民のわがまま振りに反応した一般視聴者や著名人たちは、反対派住民への批判がより一層激しものになった。
今、ネットもテレビもどのメディアも、反対派住民への批判一色になっている。
しかし、そのような時だからこそ、今一度この児童相談所問題について整理するべき時期ではないのか。
建設予定の児童相談所とは
南青山に建設予定の児童相談所は、今のところの正式な仮称は「南区子ども家庭総合支援センター」であり、平成33年4月に開設予定としている。
建設予定の場所は南青山5丁目、最寄り駅の表参道駅から徒歩4分の立地だ。
(港区HPから引用)
建設予定の土地は、平成28年8月に国からの情報提供があり、港区は児童相談所等施設の整備地として国に売払を要望。
そして12月に国から決定通知を受け、翌年11月にその用地を購入した。
総工費は100億円。内訳は土地の購入に70億円。施設建設費用に30億円。
施設の概要としては、約3200平方メートルの土地に地上4階建て。
また、児童相談所には子どもの一時保護所の併設と、子ども家庭支援センター、母子生活支援施設も同じ施設の中に併設される。
一部住民による反対とその報道
ここ数年は児童虐待の件数がうなぎ登りに上昇しており、その対応が急がれている中、なぜ南青山の一部住民は福祉施設の建設にこれほどの激しい反対抗議を繰り広げるのか。
人によってさまざまな理由があると思うが、主にあげられるのは、ブランドイメージの低下、施設の子どもの心理的劣等感、住環境の悪化などである。
やはりその中でも一番の理由は、ブランドイメージの低下だと考えられる。
周辺住民にとっては、せっかくの思いで手に入れた一等地を、よく知らない「育ちの悪い」人たちによって荒らされたらたまったものじゃない。
福祉施設が建設され、騒音や治安悪化によりその近辺の土地価格が落ちてしまうのは、周辺住民と不動産会社にとっては一番に避けたいと思っていることだろう。
さらにもう1つの理由として、なぜ青山に建てないといけないのか。
その理由が反対派住民にとってはあまり釈然としないのだ。
ちなみに港区の職員によると、これほど駅から近く広い土地は、今後探しても出てこないという。
しかし、周辺住民たちの建設反対の思いの強さは、12月14日に行われた住民説明会の映像を見れば一目瞭然だ。
ランチ単価は1600円や、田町に建てればいいじゃないかなど、その見え隠れする選民思想と差別意識は、ネットのみならずテレビでの報道番組でも批判の声が上がっている。
この批判の嵐は止まるところを知らない勢いだ。
報道の仕方に疑問
実は、このような福祉施設の建設反対騒動は今回の南青山に限った話ではない。
同じ港区内の白金台でも建設予定だった保育室が住民の反対で開所時期を延期。
世田谷区内でも保育所の開設延期。
なぜ全国各地で同じようなことが繰り返されるのか。
私が1つとして考えるのが、メディアの報道だ。
上記の 福祉施設の建設がとん挫されるニュースは、ネットだけでなくテレビでも朝も昼も夜も特集を組んで報道をしていたことがあった。
しかし、大概の報道は基本的に同じことを伝えるだけだ。
建設予定の場所と施設の紹介、反対派住民の意見、その分析を語るコメンテーター、反対派住民への批判的な意見、論調...
大体この流れで特集は終わってしまう。
このような福祉施設の建設反対問題で、番組司会者やコメンテーターが必ず言う言葉がある。
「周辺住民への理解が得られない」
確かに、周辺住民に深い理解があれば、建てても良いだろうと思うかもしれない。
その理解を促すために、福祉施設を建てたい地方自治体や民間事業者は住民説明会を行うのだ。
しかし、それだけでは理解が得られないのが現状だ。
それ以外に何も手立てが無く、結局は計画を変えざるを得ない。
当事者意識を促す報道を
そのようなときこそ、メディアは広く国民に深い理解を与えるときではないのか。
メディアはただ単に、福祉施設の建設計画と、反対派住民の意見のみを伝えればいいのか。
その反対派住民に批判的なまなざしを向けるだけでいいのか。
それは、きっと違うだろう。
では、メディアの役割は一体何なのか。
ただ単に情報を不特定多数へと送るための媒体だけではないはずだ。
きっとメディアに関わる多くの人々も、そのメディアの影響力を自覚しているはずだ。
メディアも周辺住民のみならず、国民に深い理解を与える報道をするべきだ。
だからこそ、ただ福祉施設の建設反対運動があった、それだけを伝えるだけではいけないだろう。
おそらく今後も全国各地で多くの福祉施設の建設は行われるはずだ。
そしてその周辺住民として当事者となる市民も多く増えるだろう。
そのようなときに、福祉施設が建てられることによる不安と不信を抱いてしまわないように、メディアは今すぐにでもそのただ情報を伝えるだけの報道を変えるべきである。
国民がみな当事者意識を持てるように、報道の仕方に一層力を入れるべきときである。