けろけろの考えごと

無駄な思考もいつかは再利用できると信じて

「お金がなくても若者は幸せだ」論は消滅した

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世論で蔓延る若者幸福論

社会学者である古市憲寿の著書「絶望の国の幸福な若者たち」をご存知だろうか。

タイトルにある絶望な国とは日本のことであり、その日本に住む若者は絶望な国という名とは裏腹に幸福と感じている。

ざっくりとタイトルだけでそのような主張がされている本とイメージできるだろう。

実際に著者の古市は様々な現場の若者と対面し取材を重ね、そして国の大規模な社会調査でも今を幸せと感じる若者が多いというデータを基に、なぜ今の若者は幸福と感じている謎を解き明かす。

この著書のネタバレとなってしまうが、現代の若者が幸福と答える理由として、将来に対する失望があるからだと古市憲寿は言う。

日本経済はバブル崩壊後停滞を続け、未だに日本政府は有効的な経済政策が打ち出すことができない状況にある。

さらに高齢社会の進行で税負担は増加し、人口減は止まらない。

今後今の生活よりも豊かになれないと悟った若者は、今の生活環境がこれから数十年続く人生の中で一番豊かで幸福であるという意味で「今は幸福」と答えるのだ。

この本が発行されたのは2011年9月で、私がこの著書を読んだのは4年前だが、その当時でも古市憲寿のこの主張に対しては概ね賛同していた、

 

さらに別の記事になるが、2022年1月のアベマニュースを取り上げたい。

times.abema.tv

Twitterでも一時期バズッた「今の若者の間では年収400万円が高給取りと認識されている」というツイートを基に評論家たちが現代の若者論を展開している記事だ。

さらにこのアベマニュースでは年収300万円のYouTuberりょうさんの家計簿や生活実態を紹介し、それに対して芸人のパックンはこう論じた。

「りょうさんの暮らしの方が圧倒的に豊かだと思う。当時はレンタルビデオ屋さんで、1本1泊400円で映画を借りていたが、今なら1000円くらいで見放題だ。当時がPHSに6000円くらい払っていたが、同じくらいの値段で、今はスマホが使える。確かに実質賃金は下がってはいるが、見えない部分で豊かさが増えていることも忘れてはいけない。」

パックンの昔の貧乏時代に比べ、スマホ一つで様々なジャンルの楽しみを享受できる今の若者のほうが豊かさは増えていると言う。

しかもそれらを低価格で嗜むことができるのだからたくさんの年収だって必要がない。

だからお金がなくても現代の若者は幸福だと言えるのだろう。

その主張も私は概ね賛同していた。数か月前までは。

 

崩壊した若者幸福論

2022年2月24日、ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まった。

直ちに世界各国はロシアに対して経済制裁を発動し、ロシアも報復として制裁国航空会社のロシア領空の通過を禁止、天然ガスの供給停止を示唆するなど世界経済に大打撃を与えかねない状況に陥っている。

また、2020年からのコロナ禍によって物流の滞りや原油価格の上昇、半導体不足など企業のサプライチェーンに悪影響を及ぼしている。

それによって日本国内でも物価の高騰が止まらない。

スーパーで買う調味料や洗剤などの消費財、飲食店、自動車などの耐久財などもあらゆる分野、製品の値上げが発表されている。

さらに給与からは雇用保険料の増加でさらに手取りが減る。

過去類を見ないほどの値上げラッシュによって、もはやお金が無くても若者は幸福だ論は崩壊しかかっていると私は危惧している。

今はお金がなくても数千円でたくさんの趣味を謳歌できているが、例えばネットフリックスやアマゾンプライムSpotifyなどがさらに値上げすれば、Uber Eatsの配達報酬額が減らされたら、メルカリの販売手数料が増やされたら、今の楽しい生活を維持できるのだろうか。

 

立ち上がる若者不幸論

実は先ほど取り上げたアベマニュースの記事の最後でジャーナリストの堀潤氏がこう論じている。

「メルカリでの“自給自足”が成り立っているうちはいいけれど、いきなりハイパーインフレになったとか、戦争や大きな災害が起きたということになれば、途端に生活が成り立たなくなる可能性があるわけだ。そうなれば不幸を背負うことになる。今のうちから、余力のある人たちが“やめようぜ、変えようぜ”と言わないとダメだと思う」

まさに今、戦争や災害が世界で起きている。

それによって私たちの実生活に影響が出ている。不幸を背負い始めているのだ。

もう評論家のみならず、若者自身もお金がなくても今が幸福だとは胸を張って言える状況には無いのではないか。

だからこそ、若者が声を上げる時が来たと言える。

社会に対して、政府に対して、企業に対して訴える時がきた。

お金が無いと若者は不幸だと。